

この時期のミック・ロンソンの機材も基本的に以前と変わっていません。で、今回はミック・ロンソンが当時使ったそのエフェクターに関して…… とはいえ、ファズとワウだけなのですが。ボウイと活動する時期以前から、既にミック・ロンソンはワウとファズを使っていましたが、彼が使用していたファズはソーラーサウンドTONE BENDER(通称MK1)でした。1965年に製造された、TONE BENDERの最も初期のモデルです。
今どきのハイゲイン・アンプのような歪みを1967年に生むことは、アンプ単体では完全に不可能なのです。が、ミック・ロンソンのサウンドはかなりキツく歪んでいるのは、ボウイの名作群をお聴きいただければすぐ判ると思います。またロンソンは、ロング・サスティーンを生かしたロング・ノートが売りのギタリストでもあります。それらをもたらしたのがこのファズであったということになります。ロンソンはジェフ・ベックに憧れていたギタリストなので、ベック同様にレスポール&TONE BENDER MK1を入手したというのは合点のいく話です(とはいえ、プレイでいえば両者は結構対極ともいえるタイプでしょうが)。
ミック・ロンソンが使ったもうひとつのエフェクターはワウになります。ごく初期にはシルバーグレイの筐体に入ったイギリス製のVOX WAH-WAHしたが、ほどなくイタリア製のCryBabyに変えています。実はミック・ロンソンはファズ&ワウという、当時の王道とも言える2台エフェクターを駆使した人ですが、ちょっと変わった点があります。それは接続順です。ロンソンはギターの次にワウを、その次にファズを、そしてアンプへと信号を送っていました(写真は1967年製のVOXグレイ・ワウ。VOXのワウのうち、このモデルのみがイギリス製でした)。
機材と言えばファズとワウ、アンプはマーシャル、ギターはレスポール・カスタム。ほんとにこれだけであらゆる可能性を手繰ったロンソンの時代は、ある意味「それが当然」だった時代です。今はあらゆるシミュレート機材があり、足下の選択肢も無尽蔵に存在します。今の時代の人気ギタリストとミック・ロンソンを並列で比較することはかなり難しいかもしれません。ですが、実はこれまで書いたように、ロンソンの機材はギターもアンプもファズも、今ではほぼ入手不可能な機種ばかりで、しかもいずれも「一般的な仕様」とはまったく異なった「異質の」機材でした。これはもう偶然でしかありません。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。