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《追悼緊急企画》R.I.P. DAVID BOWIE Part.3
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2016/02/23
R.I.P. DAVID BOWIE (3)
70年代にデヴィッド・ボウイの右腕として活躍したギタリスト、ミック・ロンソンのお話の続きです。彼はレスポール・カスタム使いとしても有名ですが(ザ・カルトのビリー・ダフィーやデフ・レパードのフィル・コリン等は、もう昔からロンソン・フリークであることを公言し、ロンソンを真似て自身のレスポール・カスタムの塗装を剥いだりしています)、72年作『ZIGGY STARDUST』よりさらにギンギンに尖ったギター・サウンドを聴かせるアルバムして、73年作の『ALLADIN SANE』もあります。
この時期のミック・ロンソンの機材も基本的に以前と変わっていません。で、今回はミック・ロンソンが当時使ったそのエフェクターに関して…… とはいえ、ファズとワウだけなのですが。ボウイと活動する時期以前から、既にミック・ロンソンはワウとファズを使っていましたが、彼が使用していたファズはソーラーサウンドTONE BENDER(通称MK1)でした。1965年に製造された、TONE BENDERの最も初期のモデルです。
ミック・ロンソンは、このTONE BENDERを中古で入手したのですが、そのTONE BENDERはそれ以前にはザ・フーのピート・タウンゼンドが所持・使用していたブツそのものです。ロンソン本人がそれを証言していて「当時はそういう(ピートのお古の機材を譲り受ける)機会が何度かあった」とも発言しています。
今どきのハイゲイン・アンプのような歪みを1967年に生むことは、アンプ単体では完全に不可能なのです。が、ミック・ロンソンのサウンドはかなりキツく歪んでいるのは、ボウイの名作群をお聴きいただければすぐ判ると思います。またロンソンは、ロング・サスティーンを生かしたロング・ノートが売りのギタリストでもあります。それらをもたらしたのがこのファズであったということになります。ロンソンはジェフ・ベックに憧れていたギタリストなので、ベック同様にレスポール&TONE BENDER MK1を入手したというのは合点のいく話です(とはいえ、プレイでいえば両者は結構対極ともいえるタイプでしょうが)。
ミック・ロンソンが使ったもうひとつのエフェクターはワウになります。ごく初期にはシルバーグレイの筐体に入ったイギリス製のVOX WAH-WAHしたが、ほどなくイタリア製のCryBabyに変えています。実はミック・ロンソンはファズ&ワウという、当時の王道とも言える2台エフェクターを駆使した人ですが、ちょっと変わった点があります。それは接続順です。ロンソンはギターの次にワウを、その次にファズを、そしてアンプへと信号を送っていました(写真は1967年製のVOXグレイ・ワウ。VOXのワウのうち、このモデルのみがイギリス製でした)。
既にお気づきの方も多いと思いますが、ファズの前にワウを置くと、たいていの場合は(インピーダンスがマッチングしないために)ワウ効果がほとんど生まれません。これは当時の機材の宿命でもあります。現代の場合、その点を考慮して内蔵バッファーを組み込んだモデルが(ワウでもファズでも)存在するために、そこまで神経質にならなくてもいいかもしれませんが。
ところが、たまたまTONE BENDER MK1というファズの場合は、ファズの前にワウを置いてもワウの効果が発生します。これはMK1.5やMK2、MK3等他のTONE BENDERではありえない現象なのです。たまたまそういう設置順にしたのか、散々検討を重ねてこの形にしたのかは今となってはわかりません(註:時期によっては、ファズが先でワウを後にした、というロンソンの足下の写真も発見できます。もしかしたらあまり気にしてなかったのかもしれませんね。笑)。
今「あまり気にしてないかも」と書きましたが、試してみれば誰にでもわかるように、ファズとワウの設置順を逆にすると、ギターの出音は激変します。普通のギタリストであればそれが気にならないわけはありません。やはりロンソンの場合は「ワウが先」のほうのサウンドが彼にマッチした、と考えられるわけです。
機材と言えばファズとワウ、アンプはマーシャル、ギターはレスポール・カスタム。ほんとにこれだけであらゆる可能性を手繰ったロンソンの時代は、ある意味「それが当然」だった時代です。今はあらゆるシミュレート機材があり、足下の選択肢も無尽蔵に存在します。今の時代の人気ギタリストとミック・ロンソンを並列で比較することはかなり難しいかもしれません。ですが、実はこれまで書いたように、ロンソンの機材はギターもアンプもファズも、今ではほぼ入手不可能な機種ばかりで、しかもいずれも「一般的な仕様」とはまったく異なった「異質の」機材でした。これはもう偶然でしかありません。
筆者のみならず、プロアマ問わずミック・ロンソンのサウンドを研究しまくってる人は有名ギタリストにも数多くいますが、なかなかプロ中のプロをしてもロンソンのようなサウンドを再現するのは難しい、という現実もあります。それらは「異質の機材」が生み出した「奇蹟」のひとつかもしれません。
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