
ハイワット使いの有名人紹介、その続きです。前回はストーンズ周辺ギタリストとハイワット・アンプに関してでしたが、今回はぐぐっと時代が若返り(笑)、ノエル・ギャラガーをご紹介しようと思います。元オアシスのギタリストとして、現在はソロとして、80年代末以降ブリティッシュ・ロックの最前線に位置する人であることはもう言うまでもありませんよね。実はここ日本ではなかなか直接的にイメージできないかもしれませんが、ある意味で(あくまでも「ある意味で」という註釈が付きますが)今最も人気のあるギタリストでもあります。イギリスを含めヨーロッパではスタジアム級のコンサートにばかり出演するような、そんなアーティストでもあります。
貧乏な家に育ち、TVでザ・スミスのジョニー・マーを見て感激し、学校を退学になった後配管工をしながらギターを練習するようになり、失業保険を受けながら当時の有名バンド(インスパイラル・カーペッツ)のローディーの職につき、その後「自分をリーダーにするなら」という条件で弟リアムが在籍していたバンド、オアシスに加入、あっという間に全英のトップ・バンドになる、という典型的なブリティッシュ・ロック・バンドのサクセスストーリーをそのまま体現したようなギタリストでもあります。まあ、兄弟揃って口が悪いことでも有名ですが(笑)、そのあたりはもう仕方ないと考えるしかありませんよね。
ですが、スタジアム級のライヴを数多くこなすノエルにとっては、ステージ・アンプはその出音と同時に耐久性や信頼性に重きを置く必要があったようです。そこでソロ活動をするようになった時期からハイワットのアンプを使用するようになります。これはノエルのリクエストに答える形で、現行のHIWATT UKからノエルに提供されているものです。
キャビネットに関しては時期によって構成が異なるので一定ではありませんでした。写真はノエルが使用するハイワットの実際の写真ですが、ご覧いただけるように2x12を2つ併用する他にも、4x12を使ったり、また最新のキャビ構成として2x12でタテにスピーカーを配置した専用キャビを用意したり、といった具合に日々セットアップは変化しています。これらのキャビネットに搭載されているスピーカーユニットは、全てハイワット伝統の、フェーン(FANE)社製のスピーカーです。ステージ裏側の写真を見ると、サブ機としてもう1台のハイワット50Wヘッドをスタンバイさせていることも確認できます。
もうひとつ重要なポイント。それはペダルボードです。ノエルはオアシス期には足下にはワウ、エコー/ディレイ、そしてIBANEZ TS-9 TUBE SCREAMERくらいしか置いていませんでした。TUBE SCREAMERこそがノエルのサウンドのポイントといえるエフェクターであり、ほんの一時期を除けばいつもノエルの足下にはTUBE SCREAMER(もしくはその復刻品であるTS808)があります。
ソロ活動をするようになってからは徐々に彼の足下も複雑化してきたといえますが、それでも大量にペダルを駆使するといったタイプとは縁遠いのがノエルでして、最小限に抑えた構成といえると思います。近年の彼の足下の写真ではTS-9の変わりにピート・コーニッシュのSS-2が置いてあったり、ブースターとしてZ.VEXのSUPER DUPERを置いたりしていますね。
さて、最後に動画をひとつ張っておきます。2012年のライヴですが、O2アリーナ(ロンドン・オリンピックの球技会場として設立された、イギリスで二番目に大きな室内会場。キャパ2万人)の満員の客と共に代表曲を歌う、というライヴ。ノエルは例の50Wヘッド+4X12のハイワット・キャビを使ってますが、もう1人のギタリスト(ティム・スミス)の使用アンプにもご注目。彼もハイワットのヘッド(すいません型番不明です)と4X12のハイワット・キャビを使っていることが確認できます。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。