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Celebrities with Hiwatt (2)

2016/01/23

Celebrities with Hiwatt (2)

 ハイワット使いの有名人紹介、その続きです。前回はストーンズ周辺ギタリストとハイワット・アンプに関してでしたが、今回はぐぐっと時代が若返り(笑)、ノエル・ギャラガーをご紹介しようと思います。元オアシスのギタリストとして、現在はソロとして、80年代末以降ブリティッシュ・ロックの最前線に位置する人であることはもう言うまでもありませんよね。実はここ日本ではなかなか直接的にイメージできないかもしれませんが、ある意味で(あくまでも「ある意味で」という註釈が付きますが)今最も人気のあるギタリストでもあります。イギリスを含めヨーロッパではスタジアム級のコンサートにばかり出演するような、そんなアーティストでもあります。

 貧乏な家に育ち、TVでザ・スミスのジョニー・マーを見て感激し、学校を退学になった後配管工をしながらギターを練習するようになり、失業保険を受けながら当時の有名バンド(インスパイラル・カーペッツ)のローディーの職につき、その後「自分をリーダーにするなら」という条件で弟リアムが在籍していたバンド、オアシスに加入、あっという間に全英のトップ・バンドになる、という典型的なブリティッシュ・ロック・バンドのサクセスストーリーをそのまま体現したようなギタリストでもあります。まあ、兄弟揃って口が悪いことでも有名ですが(笑)、そのあたりはもう仕方ないと考えるしかありませんよね。

 さて、ノエルの機材の話です。ギターに関しては主にギブソンのハムバッカーものを使用していることは既に写真やら何やらでご承知と思われますので、ここでは詳細は省略します。オアシスが有名になった頃(=90年代初頭)頃まで、ノエルは当時割と一般的なマーシャル(900、2000他)や、当時復刻が始まったオレンジ、VOX AC-30等のアンプを使用していました。この頃までノエルがエピフォンの廉価ギターを良く使っていたのをご記憶の方もいると思いますが、それは当時のノエルは「機材には金をかけない」という主義だったからです。
 主義、と書きましたが、オアシスがビッグになり、時間が経つに連れてその主義もだいぶ正反対になってきたようでして(笑)、すぐにビンテージ機材に手を出すようになります。初来日当時「ギターは18本持ってる」と言ってたノエルですが、その10年後の2005年の来日時には「今ギターは93本持ってる」というような人です。

 ですが、スタジアム級のライヴを数多くこなすノエルにとっては、ステージ・アンプはその出音と同時に耐久性や信頼性に重きを置く必要があったようです。そこでソロ活動をするようになった時期からハイワットのアンプを使用するようになります。これはノエルのリクエストに答える形で、現行のHIWATT UKからノエルに提供されているものです。

 ノエルはペダルボードからアンプに2系統出力し、ひとつは50Wのハイワット・ヘッドDR504に、もうひとつはハイワットの50Wコンボ(HIWATT CUSTOM 50)に出力されています。ちなみに製品版のHIWATT CUSTOM 50は12インチ・スピーカーが1発の仕様ですが、ノエルが使っていたものはスピーカーが縦に2発搭載されたカスタムメイド品でした。

キャビネットに関しては時期によって構成が異なるので一定ではありませんでした。写真はノエルが使用するハイワットの実際の写真ですが、ご覧いただけるように2x12を2つ併用する他にも、4x12を使ったり、また最新のキャビ構成として2x12でタテにスピーカーを配置した専用キャビを用意したり、といった具合に日々セットアップは変化しています。これらのキャビネットに搭載されているスピーカーユニットは、全てハイワット伝統の、フェーン(FANE)社製のスピーカーです。ステージ裏側の写真を見ると、サブ機としてもう1台のハイワット50Wヘッドをスタンバイさせていることも確認できます。

 また、ノエルは上記した2系統のアンプ以外に、いつもフェンダーのアンプ(たいていは小型のものですが、BASSMANヘッドが置かれていた時期もあります)を用意しています。マイクの立て方等から推測するに、おそらくアコギをこれで鳴らしているのではないだろうかと考えられますが、ちょっと確証はありません。スイマセン。

 また、時期によって異なりますがノエルはいつも大会場のライヴであってもアッテネーター(たいていの場合はTHD HOTPLATE)を用いています。大会場であってもステージ上のモニタリングが爆音でかき消されないようにするため、と考えられます。またこれは同時に、アンプ側はいつもクランクさせていることの証でもありますね。
 ノエルの場合は彼の音楽性から考えても、ツェッペリンやザ・フーといったバンドとは違って爆音でドカドカとけたたましいサウンドをぶつけるタイプではありません。ステージ上の音量バランスを考えた際に、アッテネーターを使う必要があるのだろうと考えられます。

 もうひとつ重要なポイント。それはペダルボードです。ノエルはオアシス期には足下にはワウ、エコー/ディレイ、そしてIBANEZ TS-9 TUBE SCREAMERくらいしか置いていませんでした。TUBE SCREAMERこそがノエルのサウンドのポイントといえるエフェクターであり、ほんの一時期を除けばいつもノエルの足下にはTUBE SCREAMER(もしくはその復刻品であるTS808)があります。

ソロ活動をするようになってからは徐々に彼の足下も複雑化してきたといえますが、それでも大量にペダルを駆使するといったタイプとは縁遠いのがノエルでして、最小限に抑えた構成といえると思います。近年の彼の足下の写真ではTS-9の変わりにピート・コーニッシュのSS-2が置いてあったり、ブースターとしてZ.VEXのSUPER DUPERを置いたりしていますね。





さて、最後に動画をひとつ張っておきます。2012年のライヴですが、O2アリーナ(ロンドン・オリンピックの球技会場として設立された、イギリスで二番目に大きな室内会場。キャパ2万人)の満員の客と共に代表曲を歌う、というライヴ。ノエルは例の50Wヘッド+4X12のハイワット・キャビを使ってますが、もう1人のギタリスト(ティム・スミス)の使用アンプにもご注目。彼もハイワットのヘッド(すいません型番不明です)と4X12のハイワット・キャビを使っていることが確認できます。

 「90年代英国の最高傑作楽曲」といわれるこの「DON’T LOOK BACK IN ANGER」ですが、どうやら2016年になってもその評価は落ちることはなさそうです。イギリス国民なら皆歌える、とまで言われるほどのオアシス時代の大ヒット曲ですが、実はこの曲が発表されてから今年で丁度20年が経ちます。その間評価がいっこうに落ちないという点は驚かざるを得ませんね。

(本稿の記載にあたり、ノエル・ギャラガーの使用機材を徹底的に研究してるDOLPHIN MUSICのGUITAR PLAYER BLOGを参照しました。
http://www.dolphinmusic.co.uk/article/2472-the-complete-noel-gallagher-oasis-gear-guide.html


筆者紹介

TATS
(BUZZ THE FUZZ

ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。

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