
これまでハイワット・アンプのユーザーに関して、ザ・フーのピート・タウンゼンド、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモア、キング・クリムゾンのロバート・フリップ、そしてレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジといったギタリストを詳しく紹介してきましたが、今回はその他の著名ユーザー/有名なハイワット・サウンド、という見地でいくつかの例をご紹介してみようと思います。
まずは1969年。おそらくハイワットのアンプが世界中のロック・ファンの目に触れた最も多い例であると思われるステージの様子です。69年6月8日、ロンドンのハイドパークで行なわれたローリング・ストーンズのフリー・コンサート。ブライアン・ジョーンズというリーダー的ギタリストが脱退(このコンサートの直前に急逝)したストーンズにとって、2年ぶりのコンサートであると同時に、ミック・テイラーというバカ上手の2代目リード・ギタリストのお披露目コンサートでもありました。
SGを使うミック・テイラー、フライングVを使うキース・リチャーズのツイン・ギターという鮮烈でフレッシュなバンドの見た目もそうですが、そのサウンドに是非ご注目ください。ハイワット独特のパーカッシヴでパンチのあるサウンドが聴こえますよね。ハイワットの特徴のひとつに「音が早い」という点が上げられますが(そのあたりはギタリストそれぞれによって感じ方の違いがあるとは思いますが)筆者的には「うわっ、出音が早い!」と感心してしまうようなギター・サウンドです。
さて、キース、ミックとくればもう1人のギタリストにも触れない訳にはいきません。こちらの動画はロン・ウッドがハイワット・アンプを用いて行なったライヴの模様です。1970年12月7日、ロンドンのマーキー・クラブで行なわれたフェイセズのライヴです。ロン・ウッドは当時お気に入りだったという真っ赤なストラト(このギターは後に盗難にあってしまったそうですが)をハイワット・アンプで鳴らしていますね。当時のロン・ウッドの足下事情はちょっと資料もなく分からないので恐縮ですが、おそらくアンプ直ではないかと考えられます。ここでもまたしても“ハイワットの素の音”が聴こえます。
今とは時代が違う、と言えばそれまでですが、当時はギターとアンプでとにかく演奏する、それだけでバンドが世界を席巻してしまった時代です。なんといってもこのボーカリスト(ロッド・スチュワート)の素晴らしい歌、ロン・ウッドのギター、ケニー・ジョーンズ&ロニー・レインのリズム隊(そういえばロニー・レインはここでカスタムメイドのゼマイティス・ベースを使用していますね。後にロン・ウッドもゼマイティスを使用するようになることはご承知の通りかと思われます)、そしてイアン・マクレガンのファンキーなオルガン。それだけでフェイセズというバンドは十分に成り立ってしまうバンドでもありました。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。