
ブリティッシュ・ペダル・カンパニーからは、TONE BENDERではないクラシック・ファズも復刻・発売されています。今回はそんな「ちょっと変わった」英国製ファズのひとつ、DOUBLERをご紹介したいと思います。
ただし、TONE BENDERというファズ製品が注目されるようになると、TONE BENDERは彼の意図ではなく、会社(SOLA SOUND LIMITED)の思惑が優先されて設計・開発されるようになりました。商業ベースの商品ですから、ある意味当然でもありますよね。また、前述したようにゲイリー・ハーストはフリーランスの電気技師でしたから、1社とだけではなく、他の楽器メーカーとも数多く仕事をしていてもおかしくはありません。実際にゲイリー・ハーストは60年代にイタリアのメーカーでオルガンを設計したり、エルカというブランドでファズの製造を担当したこともあります。
一応分類的にはオクターブ・ファズということになりますが、オクターブ成分は純粋に入力信号のアッパーオクターブ成分のみが生成されます。そして前述したように「オクターブ」のスイッチを入れない状態であれば、そのオクターブ成分は出力されず、乱暴に言ってしまえば普通のファズの歪みだけが出てくる状態になります。しかもそのオクターブ・スイッチをオンにした時のアッパー・オクターブのサウンドは、今日的なアッパー・オクターブ・ファズのそれとはちょっと違い、むしろピッチ・シフター/オクターバーで1オクターブ上のギター信号を作り、その音を歪ませたかのようなサウンドを生成します。
動画で確認すると、現行の復刻品でも十分に大きいだろ、と思う方がほとんどだと思われるのですが、実はオリジナルはこれの倍近くデカい筐体でした。(笑)、バカデカいことで有名なTONE BENDERよりも大幅に大きな筐体を持っていました。ですが復刻版はサイズも半分近くまでダウンサイジングされ、また9V電源アダプターに対応したことでよりペダルボード・ライクな現代風筐体といえるでしょう。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。