
見た目も名前もジャンボ。それまでのTONE BENDER(MK3)と比べて幅が2cmほど広くなったと同時に、それまでなかった「COLORSOUND」という新しいブランド名をまとった新しいTONE BENDERは70年代の中頃に登場しました。
なお、JUMBO TONE BENDERが発売された当時のCOLORSOUND製品の筐体の中は、共通して白くペイントされており、その中に製造年月日が黒いスタンプで印字されるようになりました。これでやっと「このTONE BENDERが何年製か」を誰が見てもハッキリ分別できるようになった!ということにはなりますが、とてもとても残念なことに(笑)このスタンプのインプがどうもはげ落ちやすいインクでして、製造以来40年ほどを経た現在となっては、このインク・スタンプが読める状態で残っているものは結構稀です。
このワイドケースのJUMBO TONE BENDERは何種類もの外装バリエーションが存在します。銀色に青白でプリントされたもの以外にも、写真で掲載したように別なカラーリングのものもあります。筐体トップ部分に段差が付いた筐体は70年代後半以降に採用された新しいケースです。
コントロールはMK3と同じく、VOLUME、TREBLE/BASS、そしてFUZZの3つ。つまり3ノブのTONE BENDERです。しかし前述したとおりこちらのJUMBO TONE BENDERは回路にシリコン・トランジスタを3つ採用したものとなっており、ゲルマニウム・トランジスタを用いたTONE BENDER MK3初期バージョンとはやはり音が異なります。より中高域に密度の高い歪みが集中し、ジャージャーといった尖った歪みが前面に押し出されたような音です。
さてさて、上記「JUMBO TONE BENDER」と時を同じくして、また全く別な回路を採用した新しいTONE BENDERも登場しました。「SUPA TONE BENDER」と名付けられたこちらのファズは、明らかにエレハモ「BIG MUFF」の回路を模倣したと思わしき回路となっています。シリコン・トランジスタを4ケ採用、という(70年代当時としては)もっともコンテンポラリーなファズ回路を採用した、というワケですね。上記「JUMBO」では「歪みは控えめ」に設定されながらも、こちらの「SUPA」ではMUFF同様に爆歪回路をそのまま踏襲した、と考えられます。
ちなみに、こんなカンジで「BIG MUFF」の回路を模したファズという製品が70年代に世界中で発売されていたのは既知の事実でもあります。イギリスではこのSUPA TONE BENDERがそれにあたります。日本でもIBANEZ/MAXONブランドで発売されたOD-850やOD-801はBIG MUFFの回路を踏襲したものでした。
前回も触れたように、この「SUPA TONE BENDER」は1988年に一時的に復刻発売されたことがあります。その際には「STEVE HACKET」のエンブレムが付いたものでした。70年代、まだ「プログレッシヴ・ロック・バンド」だった時代のジェネシスのギタリストであったスティーヴ・ハケット(同バンドには71年から77年まで在籍)は、当時公式のエンドーザーとしてCOLORSOUNDからエフェクター製品を提供されていたギタリストでした。ハケットは88年のこの復刻版を自身の足下で使用していたことがあります。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。