
これまでこのコラムでは、BRITISH PEDAL COMPANYから現在復刻発売されているTONE BENDER各種、それとその原典にあたる60年代のオリジナルTONE BENDER、そしてそれらに関連の深いファズ・ペダルなどを紹介してきましたが、実はTONE BENDERファミリーというやつはそれだけに留まりません。ここでは「それ以外」に相当するTONE BENDERをさらっと紹介してみたいと思います。
1970年代前半、最初の「改革」がもたらされました。既にMK3ではプリント基板を用いる回路となっていましたが、大きな仕様変更として「シリコン・トランジスタを用いる」回路に変更になります。年代としてはおそらく1974年前後と考えられるのですが、正確なデイティングは現在わかっていません。というのも、「外見は何も変わらずMK3のまま」だったことに加え、古いポットを使用したブツも存在したためポットデート等からも製造年月日が断定できないからです。
まず、それまで「MK3」、もしくは一部筐体のペイントを変えた「MK4」と呼ばれるTONE BENDER(註:いま当方は気軽に「MK4」という表記をしましたが、これは極めて現存数が少なく、ほぼ入手が不可能と思われるレアTONE BENDERです。とはいえ中身はMK3とまったく同じものなのですが)は一端ディスコンとなります。それに変わって新たに「JUMBO TONE BENDER」「SUPA TONE BENDER」という名のTONE BENDERが発売になります。これらは共に幅の広い大きな筐体に入ったものでした。この時点で、それ以前のTONE BENDERを「スリムケース」、それ以降のTONE BENDERを「ワイドケース」と呼んで区別することもあります。
大きな筐体に入れられ、シリコン・トランジスタ回路を持った「COLORSOUNDブランドの」TONE BENDERは、基本的に前述した2種類のラインナップが存在しますが、ほぼ毎年のように外観のデザインが変更されています。当方の知る限りでもJUMBO TONE BENDERだけでペイントの違うモデルが5種類はあります。ただし、重ねてになりますが、中身は同じもの(笑)。よほどのコレクターさんでない限り、コンプリートする価値はあまりないだろうと言わざるを得ません。
また、「歴史と伝統の?」などという御大層なタイトルが付いているにもかかわらず(笑)、実はJUMBO TONE BENDERやSUPA TONE BENDERにはそれほど有名な使い手がいなかった、という点も悲運といえるかもしれません。前者はエドウィン・コリンズ(元オレンジ・ジュース)が少しだけ、後者はジェネシスのスティーヴ・ハケットが使用したということで一応知られています。1990年代にはSUPA TONE BENDERのスティーヴ・ハケット・シグネイチャー・モデルという復刻品が発売されたこともありますね。しかししかし、スティーヴ・ハケットがSUPA TONE BENDERを使ってた時期はほんのわずかな期間だけでして、彼は足下にTONE BENDER MK2(MARSHALL SUPA FUZZ)とCOLORSOUND OCTAVATOR(オクターブ・ファズ)とSHAFTSBURY DUOFUZZ(日本のシンエイ製OEM製品でUNIVOX SUPA FUZZと同じもの)等を同時に並べて使用しているという人でもありました。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。