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BPC / TONE BENDER 50th Anniversary Model

2015/12/03

Tone Bender 50th Anniversary

いやあ2015年ももうすぐ終わりますねえ。コラムの連載開始からもう半年以上も経っているというのに、当欄で「2015年がどんな年だったか」を今更のように書くのも変な気がしますが、忘れないウチに触れておこうと思いまして、このネタを書きます。実は2015年は、英国ファズの歴史的名機、TONE BENDERが生まれて50周年という記念すべき年だったのです。

 TONE BENDERが生まれたのは1965年の夏、イギリス・ロンドンの中央部にあったゲイリー・ハーストという電気技師の修理工房の中のことでした。あれから50年。ファズはあっという間にブームになり、あっという間にブームが去り(笑)、そしてアレヨアレヨという間に再評価が高まり、今ではなくてはならない歪み系エフェクターのひとつとして大きな存在感を放っていることはご承知の通りです。


 そんな50周年を記念して、BRITISH PEDAL COMPANY(以下BPC)ではTONE BENDER 50周年記念モデルという限定製品を2015年に発売しました。以下で紹介する製品写真はいずれもその限定モデルでありますが、これらは日本未発売となっています。その点は予めご了承下さい。

 まずは、TONE BENDERの開発者ゲイリー・ハースト自らが2015年に制作した「GARY HURST MK1 TONE BENDER」。BPCはゲイリー・ハーストと今も懇意にしており、公式に協力関係となってもう長いことになりますが、ゲイリー・ハースト本人が回路を1人で手がけた、というモデルはこれが初めてとなります。見てお分かりのように、1965年に発売された最初のTONE BENDER(=MK1)を復刻したファズとなります。

 ただし、これはたった10ケ(!)しか製造・発売されていません。そしてその価格もベラボウに高いものでして(笑)、筆者の元にも「今ならまだあるぞ。お前買うか?」などというメールがイギリスから来ましたが、貧乏人でもある当方は早々に諦めざるを得ませんでした(笑)。本国の発売価格が999ポンド。そのまま日本円にするだけで19万円にもなってしまうという超高額ファズです。

 ここで写真を見てお気づきになられた方もいると思いますが、一般に「TONE BENDER MK1」とされているものとは、ほんの僅かの、些細なデザイン上の違いがあります。それは「TONE BENDER」という筐体上部にプリントされたレタリングの書体のことです。実は1965年当時、この「TONE BENDER」という書体には2種類ありました。今回の復刻品のような「細くて2行にわけてプリントされたタイプ」と、「太い書体で1行でプリントされたタイプ」の2つです。今回の限定復刻品では、その前者のほうのデザインを踏襲して復刻したということになりますね。この復刻品ではハンドレタリング(日本語でインレタと呼ばれるもの)を採用しているので、こすると簡単にはがれます(笑)。なぜそんな脆弱なプリントにしたのか、と言えば、1965年当時そういう方法でロゴがプリントされていたので、それをそのまま復刻してみた、というわけです。

 さて、そんな「限定10ケ」という超入手困難なブツとは別に、TONE BENDER50周年記念モデルが他にもあります。各限定50ケずつ、という生産数にて、MK1、MK1.5、MK2の3種のTONE BENDERの限定品があります。

 そのうちMK1モデルに関しては、基本的に上記した「ゲイリー・ハースト本人のハンドメイド・モデル」と同じです。同じですが、違いは1つだけあります。つまりこっちの限定品は「ゲイリー・ハーストではない人が製造した」ということです(笑)。

そしてMK1.5モデル、MK2モデルもありますが、特筆すべきはMK2モデルのほうでしょうか。基本的にスペック上は現行製品版のMK2と同じですが、なんと色が違います。赤・青・白の3色があるのです。もちろんこの3色は英国のロイヤル・カラーだから、という理由で採用されたものです。

 ここでひとつだけ裏話を明かしてしまいますが、以前英国本国から筆者のもとに「ユニオンジャック・カラーのTONE BENDER発売しようと思うのだけれど、どう思う?日本でも売れるかな?」なんていうメールを貰ったことがあります。で、生意気盛りの筆者はそのメールに即答しました「ダセエよそれ」と(笑)。いや、当方にも気持ちはわかるんですよ、その気持ちは。筆者だってユニオンジャックに思い入れもあったりします(日本人ですけど。笑)。でも、そんなドハデなカラーリングしたTONE BENDERって、観光客向けのお土産品にしか見えないチャチさがあって、個人的には我慢できなかったんですよね。ええ、これは100%個人の趣味嗜好の中での話ですが。
 とはいえ、ユニオンジャック柄はともかく、記念すべきアニバーサリー商品なのだから、こういう赤とか青とか白のTONE BENDERがあっても面白いとは思います。

 最後に、この「50周年記念限定版TONE BENDER」とは別に、BPCのスペシャル限定品として「WEM PEB BOX」というファズの復刻品も発売されています。このファズのオリジナルは、その名前からも推察されるように、1966年にWEM(ワトキンス・エレクトリック・ミュージカル社)から発売されたファズを復刻したものです。このWEM PEP BOXは66年にビートルズのジョン・レノンがアルバム『REVOLVER』のセッションで用いたものです。

 ジョン・レノンがこのファズを使った、というのは写真が残されていることから間違いないだろうと思われますが、どの音源かに関しては証拠が存在しません。使ったけど、結局採用されなかったのではないか、という説も有力です。BPCの公式HPにはビートルズ「TAXMAN」の動画が紹介されていますが、実際に「TAXMAN」でリードギターを担当しているのはポール・マッカートニーで、しかもファズのかかった音ではありません。

 とはいえ、やはりジョン・レノン本人がこのファズを手にしている写真は圧倒的に魅力的な写真であることも事実でして、そんなビートル・フリークのために用意された復刻品、と言えるかもしれません。

筆者紹介

TATS
(BUZZ THE FUZZ

ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。

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