
以前当コラムにて「シリコンベースのZONK2のファズ回路に、トレブル・ブースター回路を複合したSHATTERBOX」と書いたことがありますが、今回はその複合ファズ「SHATTERBOX」をご紹介してみたいと思います。
1960年代後半、イギリスのリーズにあったJHS(JOHN HOENSBY SCEWS)社には、ファズ・ペダル「ZONK MACHINE II」(同社の初代ファズ・ペダルZONK MACHINEの改良版)と、トレブル・ブースター・ペダル「JHS TREBLE BOOSTER」がありました。ともに青い筐体に入っていましたが、ZONK MACHINEの方はまるでTONE BENDER MK1そっくりの筐体で、TREBLE BOOSTERのほうは真四角の筐体で、フットスイッチすらないという、まさに「小箱」のエフェクターでした。
繰り替えしになりますが、JHS社のファズはソーラーサウンド社製のTONE BENDERとは関係がなく、また同時にJHS社のTREBLE BOOSTERはダラス・アービター社のRANGEMASTERとは関係がありません。ありませんけど、回路はほぼ踏襲しているっていう、いわゆる「コピー製品」でした。で、JHS社はあるとき思いついたんでしょうね。この2つを1ケにしてしまえば、オリジナル・ペダルになるんじゃね?と。それは全くその通りでして(笑)、結果こんな複合ファズができました。それがSHATTERBOXです。
SHATTERBOXはファズ回路がまず先に位置し、その後にトレブルブースター回路に繋がるという回路構成となっています。そのファズ回路のほうは、前述の通り、ZONK MACHINE IIの回路を踏襲しています。冒頭に記したようにZONK MACHINEには2種類あり、初期のものはゲルマニウム・トランジスタ3ケを使ったTONE BENDER MK1回路のコピー・ファズでした。ZONK MACHINE IIはそれとは異なり、シリコン・トランジスタ(型番は2N4061)を2ケ使用した、いわゆる「FUZZ FACE回路」もしくは「TONE BENDER MK1.5回路」に近いものです。つまり、今日的な視線でみれば、改良型の「2」のほうが、最も原始的なファズの回路を使用していることになります。
そしてそのファズ回路の出力が、そのまま次のトレブル・ブースター回路に入力される仕組みとなっています。こちらのトレブル・ブースト回路はいわゆるRANGEMASTER回路とほぼ同じですが、トランジスタにはこちらにもシリコン(2N4061)を使用しています。同じトランジスタを使用していますが、うち2ケをファズで、1ケをトレブル・ブースターで使用しているという珍しい回路構成なワケですね。よって、フットスイッチも2ケ(ファズのON/OFF、トレブル・ブーストのON/OFF)ついているペダルですが、各々をON/OFFできるという点がやはり嬉しいですよね。まあそうでなければ「複合」ペダルとは呼ばれないハズですが。
動画の中でも、そして解説文にもありますが、「Tレックスのマーク・ボランが使用した」と書いてあります。なので、動画の中のお兄さんもTレックス「20TH CENTURY BOY」のフレーズをシャカリキに演奏していますね(笑)。
ところで、HHのIC-100には「サステイン・スイッチ」という機能が搭載されていて、簡単に言えばそのスイッチをオンにすると歪むような仕組みになっています。このスイッチがもたらす歪みはかなり素晴らしいと言えるもので(註:個人的嗜好を含んだ表現であることをお許し下さい)、それだけでも要注目なアンプなのですが、日本でこれを目にすることは滅多にありません。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。