

参照動画をひとつ貼ってみます。この動画は1974年3月22日、フランスのTV番組に出演した際のキング・クリムゾンのライヴ映像ですが、フリップが2台、ベースのジョン・ウェットンが3台、そしてバイオリンのデヴィッド・クロスが2台のアンプヘッドを用いています。このうち、デヴィッド・クロスがバイオリン用に用いたアンプ(HH IC-100という名の英国製トランジスタ・アンプ。これはTレックスのマーク・ボランが長年使用したことでも知られるモデルです)以外、全てハイワットのDR103が用いられています。
さて、サウンドの面でも最高なロバート・フリップ先生ではありますが、やはりなんと言ってもロバート・フリップといえばその変態的なプレイにこそ真髄があると言えるでしょう。フリップの場合はただメチャクチャな演奏をしてああなった、というタイプではなくて、何から何まで完全に理詰めで自分のフレーズもアレンジもサウンドも構成する、という頭デッカチな人です。ハッキリ言ってバケモンです(笑)。数多くの著名ギタリスト/ミュージシャンをとりこにしてしまうそのバケモンですが。以下、アンプ以外に関するフリップ先生の「コダワリ」の部分を列記してみます。ただし、いずれも74年のインタビューからの抜粋なので、74年時点でのコダワリであることを予めご理解下さい。
ジョン・アルヴェイ・ターナー社はイギリスの老舗弦メーカーで、主にアコギ用の弦、バンジョー、マンドリン等の弦を取り扱うブランドです。当時はライトゲージでも3弦は巻弦でした。それをいやがって、3弦でもプレーン弦を用いたという意味。また、本稿冒頭でのライヴ動画でもフリップ先生のギターがドアップで映し出されますが、たしかに弦高がけっこう高かったことが確認できます。
そうなんです。実はフリップのギターフレーズにはわざと音を外してる箇所があります。半音とかモードとかいう世界の話ではなく、1/4音以下の単位で音をあえて外してたりします。前述したとおり、フリップが正確なピッチにこだわるのは“ワザと”微妙な音の外し方をするためでもあります。歪んだサウンド=倍音成分をモリモリに盛り込んだサウンドだとその「外し」は顕著に耳に残りますが、その不協和音でさえ音楽に取り込むフリップ先生の音楽観は、恐ろしく深いことを思い知らされるのです。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。