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ROBERT FRIPP and HIWATT (02)

2015/11/11

■ROBERT FRIPP and HIWATT (Part. 2)

 前回の当コラムにて、アンプとエフェクトの乗り、という話を書きました。また、キング・クリムゾン(以下KC)のロバート・フリップはそこを重視してハイワットのアンプヘッドを選んだのだろうという推測も書きましたが、前述通り、ロバート・フリップが使用したファズは、初期にはバーンズBUZZAROUND、中期?後期はギルドFOXEY LADYでした。


 バーンズBUZZAROUNDに関しては、当コラムの別項(https://1484.bz/shibuya/britishpedal/blog/1029.html)にて触れていますのでそちらを参照いただきたいのですが、ここでちょっとギルドFOXEY LADYに関して補足してみます。アコギのメーカーの老舗として現在も親しまれる名ブランドであるギルドですが、70年代にはアコギのみならずエレキギター、それに加えてエフェクター製品も発売していました。

 フリップが使用したファズ、ギルドFOXEY LADYはその70年代初期のものですが、これはその中身も外身も当時のエレクトロ・ハーモニクスBIG MUFFと同じものです。エレハモ社がギルド社のためにOEM供給していたものです。フリップが使用したFOXEY LADYは、BIG MUFFの中でも最も初期のモデル、通称「トライアングル」と呼ばれるものと同じものでした。(写真はエレハモ社のトライアングル期のBIG MUFF)

 強烈な歪みを生み出すことで、今も昔も有名なBIG MUFFですが、この「BIG MUFFとハイワットの組み合わせ」はあらゆるミュージシャンにとって理想的とも言えるマッチングをもたらすようです。今回の主役ロバート・フリップもそうですが、同じくプログレッシヴ・ロックの雄ピンク・フロイドのギタリスト、デヴィッド・ギルモアもBIG MUFF&ハイワットの組み合わせを長らく愛し、また時代は違いますがダイナソーJRのJマスシスもBIG MUFF&ハイワットの組み合わせを愛しているギタリストです。

 話をロバート・フリップに戻します。以下、74年に残されたフリップ本人の発言です。

RF:昔はマーシャルも使用したのだが??まあその時はマーシャルでもよかったのだけれど??、ハイワットを試してからは、よりそちらの多面性に興味を持つようになった。ライヴで轟音を鳴らす、というだけならマーシャルでも十分だと思う。だがここ最近は皆が一様にマーシャルを使うわけでもなくなったよね。今後は皆、ハイワットのような音に移行するんじゃないかな。

 前回のコラムから何度となく出てくる「多面性」。つまりフリップは曲によって、もしくは曲のパートによって頻繁にサウンドを変えるプレイを指し、それを可能にするのがハイワットだと考えていた模様です。また、自身のハイワット・アンプのセッティングに関しても言及しています。

RF:アンプはブリリアント・チャンネルにプラグインしている。そして、ノーマル・チャンネルにもジャンプさせる。言い換えれば、ブリリアント・チャンネルの信号をノーマル・チャンネルでも鳴らすことになる。これでボトムの成分を追加することができる。ハイワットは、ブリリアント、ノーマルの両方のチャンネルでボリュームをコントロールでき、さらにマスター・ボリュームで全体の音量を調整できる。もしクリーンなサウンドを出すという場合は、チャンネルのボリュームを控え目にして、マスター・ボリュームを上げる。トーンをハッキリと変えたい、という場合は、2つのボリュームの中間にあるレシオ(トーンつまみ)で変化を付ける。歪んだ音が欲しい場合は、各チャンネルのボリュームは共に上げて、マスターボリュームを下げる。これで、小さな音量であっても十分に歪みを得られる。また、ギターのボリュームをフルにしていたとしても、歪み量を調整することができる。

 この発言を現在の目線で読めば、ギターアンプの仕組みに関して極めて基本的なスタンスでの発言と思う方もいるかも知れません。しかし、1974年当時はマスターボリュームを備えたアンプはそれほど多くなく、さらには2CHインプットをリンクさせて、1本のギターの入力信号をそれぞれでコントロールするという方法を、シンプルかつ明快な理論でこのように語ったギタリストは当時ほぼいませんでした。当時の著名ギタリストは「その日出た音がそのまま自分の音」というような(笑)、機材にまったく無頓着なタイプも多くいましたが、フリップのように完全に機材を把握し自身の音を理論的に構築するギタリストもいました。

 また、フリップが「理論的に」ギターのサウンドを変化させるポイントを、別な角度から解説している発言もあります。その部分を抜粋してみます。この発言で、フリップはギターのボリューム・コントロールとファズの関係を解説しています。

??いつもトーンとスイッチはどういう位置に定めてるの?
RF:音楽がどんな音を必要とするか、による。ボリューム・コントロールのために、私はフット・ペダルを使う。ギターのボリュームをフルにした時に初めて正確な出力インピーダンスというものが得られる。その場合私はギターのボリュームはフルにしたままだ。10、という意味だな。しかしそこには例外があって、ギターのインピーダンスを変えることによって、私はエレキギターを使いながらもまるでアコギのようなサウンドを生み出し使うことがある。その場合、ギターのボリュームは6?8といったポジションにする。8.5といったポイントを越えれば、インピーダンスは一気に変わる。そのインピーダンスの跳ね上がりこそが、サウンドのバラエティーを生み出すのだ。そのために、ギターではなく、フット・ペダルにてボリュームを操作する。

 エレキギターの音が「ギター側のボリュームで激変する」という現象を経験された方は多いと思われます。同時に「ギターのボリューム・ツマミは“ボリューム(=音量の)コントロールとしてあまり使えない”」などという(笑)不思議な現象も実在します(註:もちろんエフェクター等を狭まずにアンプ直でプレイする方なら、ギターのボリューム・ツマミはそのまま“ボリューム・コントロール”として使えますが)。

 特にファズを利用するギタリストであればこの経験をされた方は多いでしょう。ジミ・ヘンドリクスという天才ギタリストを筆頭に、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック等往年のギタリスト達の当時の映像を見ると、皆一様に「病的に」と思えるほどにギターのボリュームを頻繁にイジってる姿を確認できますが、これはすべて「ギターの出力インピーダンスを変えている」行為に他なりません(写真は1974年、TV出演時のジェフ・ベックの演奏シーンより。1曲の中で10度近くギターのボリュームをいじってるジェフ・ベックの姿を確認できます)。

 ピックアップやポットの数値・カーブにもよるので全てのギターが一緒というワケではありませんが、ファズをオンにした状態でも、ギターのVOLがフルなら爆音大歪み、VOLが7?8くらいならクランチ、5?6くらいなら鈴なりのクリーン、というバリエーションを生み出すことが可能になります。フリップはこの現象を指して「まるでアコギのようなサウンドを生み出し」と語っているのです。ジミヘンやジミー・ペイジはそういった操作を文字通り手元のギター・ボリュームにて操作しましたが、ロバート・フリップの場合は演奏中=両手が塞がっている状態でもその操作が可能なように、ボリューム・ペダルを利用することで音色の変化を付けていたということになります。(この項続く)

 

筆者紹介

TATS
(BUZZ THE FUZZ

ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。

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