
1965年、イギリス初のファズ製品「TONE BENDER」が発売されたのとほぼ時を同じくして、画期的なギター用エフェクターがイギリスで開発・発売されています。こんにち一般的に「トレブル・ブースター」と呼ばれるそのエフェクターに関して、そしてそのエフェクターを開発したダラス社に関して書いてみたいと思います。
いきなりの余談で恐縮ですが、ダラス社は「RANGEMASTER」という名前をブランド名として扱っていたか、製品名として扱っていたか、ちょっと正確が線引きができないのです。というのも同社は60年代初期に、主にアンプ製品を扱う「RANGEMASTER」、自社製品を扱う「DALLAS」、輸入ギターを扱う「SHAFTSBURY」、と様々なブランド名を使い分けていたからです。また同社は1959年に「DALLAS RANGEMASTER」という名のアンプ製品を発売していて、これは10インチ・スピーカー1発とビルトイン・トレモロ機構を備えた15W出力のコンボ・アンプですが、それほど人に知られることなく、ほどなくしてこのアンプは廃盤製品となっています。ちょっと面倒臭いですよね(笑)。ただし今回のトレブル・ブースターとは無縁の製品ですので、ここでは参考程度にだけ書いておきました。
このアービター氏はもちろん後にあのFUZZ FACEというファズを生んだことでも知られる「ダラス・アービター社」の経営者となった人でもあり、もうひとつトリビアを書けば、ビートルズのロゴ・マーク(THE BEATLESというアルファベットの、Tの下部分が伸びたもの」を作った人でもあります。なぜ彼がこのロゴを作ったのかと言えば、前述の楽器店「DRUM CITY」にて1963年にビートルズのリンゴ・スターがドラム・キットを購入した際に、バンドのロゴマークをバスドラの前面にプリントしたいから、ロゴをあしらってくれ、という要請から始まったものです。
何度も書いていますが、同社の製品として一番有名なのは間違いなく円形のファズ、FUZZ FACEでしょう。しかし、そのFUZZ FACE同様に21世紀のこんにちに至るまで多くのプレイヤーを魅了し、多くのロックの名作群にて使用された歴史的なエフェクターが英国ダラス・ブランドにあります。それが「RANGEMASTER」というトレブル・ブースターなのです。
66年に発売された『JOHN MAYALL BLUES BREAKERS WITH ERIC CLAPTON』はクラプトンの名演を収めた名盤として有名ですが、このアルバムでクラプトンの生み出したサウンドはギブソンLES PAUL、マーシャルJTM45、そしてダラスRANGEMSTERを用いたものでした。このアルバムのサウンドにノックアウトされた人はかなり多かったようで、後のプレイヤーにも大きな影響を残しています。
実はロリー・ギャラガーのサウンドに魅了され、ギタリストを志した1人がゲイリー・ムーア(2011年没)でした。彼もトレブル・ブースターのサウンドを愛した人ですが、JMI社(BPC社の前身の会社)がRANGEMASTERの完全復刻版を発売(2009年)した際に、我先に、と同機種をいち早く購入した1人でもあります。ゲイリー・ムーアは自らその復刻品を求めるべく楽器店に足を運び、店頭で「自分がどれだけロリー・ギャラガーのサウンドに憧れたか」や「トレブル・ブースターとアンプの相性が?」といった話を店頭で熱く語った、というエピソードも聞いています。
そして筆者の個人的趣味を交えて言えば(笑)、ダラスRANGEMASTER使いとして常に参考にしているのはTレックスのマーク・ボランです。エレキギターを弾くようになって以降のマーク・ボランは、使用するアンプがなんであれ常にRANGEMASTERを通していた、とのこと。マーク・ボランのサウンドに関しては、幸運にも「おそらく世界一マーク・ボランのサウンドに詳しい」と思われるギタリストが日本にいます(笑)ので、近いうちにその方にご登場いただいて解説していただこうと考えています。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。