
1969年から1971年の間、ステージ上のジミー・ペイジはハイワットをメインで使用していた、という話の続きです。まず、そのアンプはどんなものだったかを見て行きたいと思います。ルックスは通常のハイワット100W=DR103とほぼ同じものに見受けられますが、明らかにノーマルDR103とは異なる点が3つ発見できます。ひとつはインプットジャック付近に設けられたXLR端子。それからコントロール・パネルに配置された「BALANCE」と書かれたツマミ、そしてコントロールパネルの上に印字された「JIMMY PAGE」の文字です。
まずXLR端子に関して。これは前述したようにフットスイッチを接続するための端子です。では何をスイッチで切り替えるのかというと、アウトプット・レベルを切り替えるものです。そして「BALANCE」と書かれたツマミはアッテネート機能を保持した出力調整ツマミであり、ノーマル状態だとこのツマミ(ポット)はスルーして出力されます。スイッチを入れるとこの「BALANCE」ツマミが機能し、出力を下げることが出来ます。ここで注目したいのは、この「BALANCE」ツマミ以外にも、このハイワットのヘッドには(通常のDR103同様に)インプットゲインのツマミ、そしてマスターボリュームのツマミも持っている、ということです。
その2年前、68年の段階でジミー・ペイジ本人が「僕のギター・サウンドの75%はこれで出来てる」とまで語ったファズ=TONE BENDERですが、その後は使用頻度も少なくなりました。その理由が本人から語られたことはないのですが、推測するに、アンプで十分な歪みを生むことができ、さらにそのアンプの歪みを望み通りにコントロールできるようになったからではないか、と思われます。その歪みを生み出したのがハイワットのカスタム・アンプヘッドで、その最も分かりやすい例が70年のロイヤル・アルバート・ホール公演でのレッド・ツェッペリンのサウンドだろう、と考えるのですがいかがでしょうか?
ひとつはペイジのアンプヘッドを完全に再現した「SSJ103 HEAD」です。XLR端子を装備し、アッテネート機能のコントロールを足下で行なう「BALANCE」機能を装備。また、前述したように(通常のDR103とくらべて)インプットのゲインがより大きく設定された回路を採用しています。ただし、さすがにジミー・ペイジ本人の名前を冠することは難しかったようで(笑)、パネルにはペイジの名ではなく「SAP」という文字がプリントされています。このSAPとは「SPECIAL ALL PURPOSE」の頭文字ですが、深い意味を持つコードネームではありません。実は1970年代から、ハイワット・アンプには「AP(=ALL PURPOSE)」というコードネームが存在し、アンプのバックパネルのシリアルコードにこの2文字が印字されていることがあります。が、この「AP」は実際には「ギターでもベースでもキーボードでも使用可能」という意味で付けられたものでした。ジミー・ペイジのカスタムヘッドのみならず、ユーザーのリクエストに答えてカスタマイズされた回路で制作・出荷されたアンプは皆「SAP」でもある、ということになります。
さらに、現行のHIWATT UKではもうひとつ、ペイジ・サウンドに特化したアンプをラインナップしています。それは前述したようなジミー・ペイジのスペシャル・サーキットをそのままに、出力を20Wまでダウンサイジングした「LITTLE J RIG」というモデルです。このモデルでは前述のSSJ103とは異なり、
という仕様に変更されています。1/4フォーン端子であれば今一般に販売されているラッチタイプのフットスイッチが使用可能というわけです。また出力を0.5Wまで下げれば、もちろん自宅での使用も可能です。(余談になりますが、アンプで歪みを作ろうと思う場合、フルチューブ・アンプだと出力が1Wでもかなり音はデカいですよね。家族や隣人からのクレームを考慮すると、小出力であることはやはり我々日本人の住宅事情にとってとても重要です)。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。