

この9月の終わり頃に、8年ぶりとなるソロ新作『RATTLE THAT LOCK(邦題:飛翔)』が発表されることになってますね。今回はデヴィッド・ギルモア(ピンク・フロイド)のお話です。ギルモアは長らくハイワット・アンプのユーザーとして知られますが、実は日本の音楽シーンでは想像し難いほどに欧米でのギルモアの人気は非常に高く、彼の音やプレイにはとても大きな注目が集められます。フェンダーのストラトとハイワットの組み合わせが生み出すその絶妙な「味」に酔いしれたという方も多いでしょう。本稿でこれまで取り上げてきたピート・タウンゼンド(ザ・フー)、ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)等と並び、ハイワット・アンプを語る上では欠かすことの出来ないレジェンド・ギタリストです。
たとえばギター。ストラト使いとして有名ですが、彼は54年製ビンテージも使えばレースセンサー・ピックアップを搭載したコンテンポラリーなストラトも使います。テレキャスも使うしレスポールも使います。アンプは前述したようにハイワットがメインですが、ステージに常に3台以上のヘッドを持ち込み、キャビも6台以上使います。その他に(!)フェンダーのアンプやヤマハのロータリー・アンプなんかも使う人です。
また、ギルモアといえば多様なエフェクター使いとしても知られます。ギルモアの歪みのトーンに欠かせないのがエレクトロ・ハーモニックス「BIG MUFF」であることも良く知られているところでしょう。エレハモ製のMUFF(彼はトライアンウルもラムズヘッドも使います)だけではなく、ピート・コーニッシュによって製作されたMUFF系ファズ「P-1」「P-2」「G-2」を使うことでも知られています。しかもギルモアは同時にダラス・アービター「FUZZ FACE」を使ったり、MXRのフェイザーも使ったり、エレハモの空間系も挟んだり、ブースター(一番有名なのはカラーサウンド製の「POWER BOOST」でしょうか)を挟んだりもします。さらに、イタリア製の有名なビンテージ・エコー・マシン「ECHOREC」はやはりギルモアを語る際には外せませんよね。
1969年10月にピンク・フロイドは2枚組アルバム『UMMAGUMMA(ウマグマ)』を発表していて、半分がライヴ、半分がスタジオ録音というアルバムでしたが、ジャケにはバンドの使用機材がズラリと並べられた写真が用いられており、その中にサウンド・シティー・ブランドの「L100」アンプヘッド、そしてハイワットの100Wヘッド、それから(PA用も含めて)大量のWEM製スピーカー・キャビネットが映されています。ここにあるサウンド・シティーのアンプはロジャー・ウォータースが、そしてハイワットのヘッドはデヴィッド・ギルモアが使用したものだろうと考えられます(デヴィッド・ギルモアは最初のハイワット・ヘッドを1969年8月に購入しました)。
このライヴ、1971年にイタリアのポンペイという古代遺跡の中で行なわれた無観客ライヴで、この映像はドキュメンタリーとして劇場公開された映画の一部です。ちょっと映像の迫力が凄すぎて、なかなか機材にまで意識を持っていくのが大変かもしれません(笑)。メンバーは4人しかいないのに、なんという数のアンプ&キャビネットでしょうか。しかもこの映像では御丁寧なことに、このフロイドのメンバー4人を取り囲むアンプ・キャビネットの周囲をカメラが1周してくれます。前述した通り、どこまで行ってもWEM製スピーカー・キャビネットだらけではありますが。TATS
(BUZZ THE FUZZ)
ミック・ロンソンに惚れてから、延々とTONE BENDERの魔界を彷徨う日々を送る、東京在住のギター馬鹿。ファズ・ブログ「BUZZ THE FUZZ」主筆。スペインMANLAY SOUNDとの共同開発で各種TONE BENDERのクローン・ペダルを企画・発売すると同時に、英JMI~BRITISH PEDAL COMPANYでのTONE BENDER復刻品の企画・発売にも協力。季刊誌「THE EFFECTOR BOOK」(シンコーミュージック刊)ではデザインを担当。