Legendary Guitar Title
Early 70s Gibson Les Paul / Red →ひとつ前のページに戻る
70s Gibson Les Paul

70s Gibson Les Paul / Headstock
レス・ポール・スタンダードなのに“CUSTOM”と刻印されたトラスロッド・カバー。
70s Gibson Les Paul / Head Back
ヘッド付け根には、小さいボリュートが付いている。

 ギブソン社が50年代より主力商品として製造してきた“レス・ポール・モデル”は、残念なことに1961年にはSGシェイプのボディへと変更され、短い生産期間のまま終わってしまう。60〜70年代当時のハードロック・シーンでは、SGではなく50年代のレス・ポールの方が多くのミュージシャンたちに使用され、そのヘヴィなサウンドを好んでいたのに皮肉なものである。しかしギブソン社は60年代後半に、再びレス・ポール氏とコンタクトを取り、50年代と同じシングル・カッタウェイ・シェイプのレス・ポールの生産ラインを再可動することとなる。それが1968年に再発されたレス・ポール・モデルである。発売されたモデルは大きく分けて2機種で、1956年製を彷彿させるゴールド・トップとハムバッキング・ピックアップを搭載したカスタムというラインナップであった。

 しかし、この2種類のレス・ポール・モデルは50年代と大きく仕様が異なっていた。1968年製はネックが1ピース、ボディ・バックは単板仕様であったが、それ以降に作られたモデルは70年代のレス・ポールに代表される3ピースに積層した通称“パン・ケーキ”ボディに、3ピース・ネックが採用された。  再生産レス・ポール・カスタムにはハムバッキング・ピックアップが搭載されたのに対し、スタンダード・モデルは1972〜74年までの間に216本のイレギュラーな生産が行なわれただけ。よってハムバッカーPUを搭載したスタンダード・モデルは1974年に限定で約2,200本生産されたモデルまでは、正式なラインナップとして存在していない。次に生産されたのは1976年で、この時点からレギュラー・ラインナップの仲間入りをし、今日に続く生産ラインが確立する。

 今回紹介するレス・ポールは非常にユニークな仕様を持つ。ヘッドストックはラージ・サイズだが、ロゴは70年代中頃に多く使用されている“i”のドットなしバージョンで、ネックは3ピース・マホガニが採用されている。そしてヘッド裏には“MADE IN USA”の刻印がない1969年までの仕様となるが、トラスロッド・カバーに“CUSTOM”の刻印が入っていることから、カスタムメイドであることがわかる。加えてヘッド裏には小さなボリュートが設けられていることから、1969〜70年の仕様であることが考えられる。ちなみにポット・デイトは1971年である。以上の物的証拠から、1969〜70年のスペックで製作されていたものが、1971年にカスタムメイドとして組み上がったという推察が立つ。

 ボディ・トップは“ウォーター・メロン”と呼ばれる鮮やかな赤色で彩られ、これは当時の[ES-335TD]で使用されていたカラーでもある。そしてボディ・バックとネック裏は当時のSGに使用されていた、やや濃い目のワイン・カラーとなっている。ネック・ジョイントは、1969〜74年まで採用された、ピックアップ下にジョイント時の接着剤を逃すための溝がある仕様で、いわゆるディープ・ジョイントとは異なった構造を持つ。

 1999年にクリスティーズにて開催されたエリック・クラプトンのオークションの目玉として“ブラウニー(1956年製フェンダー・ストラトキャスター)”が出品された。そして同じオークションの中で、ロット・ナンバー15番として出品されたのが、[1970s Gibson Les Paul Custom]であった。実はそのギターも本器同様のカラー(赤)でありながら、レス・ポール・カスタムの仕様となっている。同時期に生産されたカスタムメイド……すなわち兄弟機種であった可能性が考えられる。まさにレジェンダリ〜!

商品情報、スタッフ役職は、2007年時点のものです。

プロフェッサー岸本:プロフィール
平成8年入社。ヴィンテージ・ギターに関しての知識はイシバシでNo.1! プロ・ミュージシャンのお得意様も多く、彼のマインドに惚れ込み、多数お店に通っていただいている。また、英語力もまずまずのため、直接ギター工場のマスター・ビルダーたちと話し合いすることも。彼自身のフェイバリット・ミュージックはカントリー・ロック、ブルーグラスなど。

70s Gibson Les Paul / Body
“ウォーター・メロン(スイカ)”というニックネームを持つ、レッド・フィニッシュ。
70s Gibson Les Paul / Parts
金属パーツがゴールド・メッキという、イレギュラーな仕様。
70s Gibson Les Paul / Body Back
ボディ・バックとネックは、濃い目のワイン・カラー。
70s Gibson Les Paul / Body Back Pan Cake
マホガニー/メイプル/マホガニーによる3層構造の“パン・ケーキ”ボディ・バック。
70s Gibson Les Paul / Control
ゴールド・ハット・ノブを採用。
70s Gibson Les Paul / Assy
トーンにはオイル・キャパシターを使用。

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