Welcome to Knaggs Guitar Factory

1912年に建てられた赤レンガの工房はベーブ・ルースが活躍した時代のグローブ工場跡地

美しい自然と古い建造物が多く残るオールド・タウン、メリーランド州グリーンズボロにあるナッグス・ファクトリー。 1912年に建てられた赤レンガの美しい工房は、多くの窓から自然光が差し込み、ギター製作にはこれ以上ないほどの気持のよい健全な環境が整っている。ジョーはこの工房のなかでも今では手に入らない巨木のイエローパイン材で骨組みされた梁や桁が大好きであるとのことで、木材への愛情はギターにとどまらないことが伺えた。今回は唯一のデザイン・サウンドを併せ持ちながらも、ビンテージな雰囲気と古き良き時代のエレクトリックギターのサウンドニュアンスを併せ持つ、Knaggs Guitarsが如何にして製作されているかその工房の全貌にせまる。


  • 突き抜けるような青空のもと赤レンガと緑のコントラストが映える工房の外観

  • ギターのモデル名「Choptank」の由来にもなっている工房近くにある河の看板

  • 鉄製のビンテージの窓枠から自然光が差し込む気持ちのいい工房風景

  • ワシントン ダレス国際空港からチェサピークベイブリッジを超えて東へ、およそ3時間、豊かな自然が残るグリーズボロの風景

Wood Section<木材の保管/CNCマシン>

カスタムショップならではの厳選された木材ストック群。メイプルは主に硬質で音響特性の優れたイースタン・メイプル材をストック、ネック材のメイプルは全てが強固なクオーター・ソン材が備蓄されていた。

Influenceシリーズの指板に使用されるローズウッドには直線パターンの木目と色合いからイースト・インディアン・ローズウッドがセレクトされ、Chesapeakシリーズで使用されるココボロ材も多くストックされていた。ココボロ材はブラジリアン・ローズウッドに良くにた音響特性と、赤みを帯びた美しい杢目、経年変化の色味変化が味わい深い高級指板材である。「良いギターは良い木材から生まれる」とするジョー・ナッグスの厳しいこだわりと目利きが詰まっている。ピックガード用のウェンジ材、セバーンに使用されるサペリ材、アコースティックギター用のレッドスプルース材、スペックにはないスポルテッドメイプル材等もストックされていた。全ての材はストック棚右に用意されたホットボックスに入れ、含水率が6%になるまで乾燥させる、環境によってはさらに乾燥させてから製造に移すとのこと。


  • カスタムショップらしい厳選された木材ストック棚。メイプルやマホガニーといった定番の木材以外も多数保管されている。

  • 木材のグレードに合わせマーキングされている。
    T1と記されている材は、最上級モデルとなるTier1で使用される。

  • 棚脇に用意された “ホットボックス”。蓋として打ち付けた板を外して中を拝見させていただいた。

ラフカットされたボディはCNCマシンにより一本ずつ成形される、セバーンのトップだけでも約40分かけて丁寧なカットが施されていた。成形されたボディにサンディングを施すルーカス・フロンツォリ氏は、元Paul Reed Smithで木工加工、ネック組立て、フィニッシュサンディング等を担当していた経歴を持つ。作業をいったん止めてにこやかに取材に応じてくれた。流れ作業に追われるような工場ではない、工房ならではの居心地と雰囲気が大変気持ちいい。


  • ラフカットされたボディ。

  • CNCによってカットされていくボディ。トップだけで40分もかけてゆっくりと成形していく。

  • 一旦作業の手を休め、にこやかに撮影に応じてくれた。ルーカス・フロンツォリ氏。

Neck Section<ネック形成>

  • 元Paul Reed Smith (PRS) の木工部門マネージャーで、Knaggs Guitarsにおいてはネック成形と組み込み、彫り〜磨き、塗装までも手がけ、家具修復の専門家としても活躍する工房のキーマン、ディーン・ニッチ氏。彼によるネック成形風景。セバーンのネックヒール部分、およびヘッド裏アングル部分のシェイプはハンドカービングによる手彫りが施されている。 演奏性が高く手にしっくりと馴染むネックカーブはシニアマスタービルダーの魂のこもったノミ・やすりによる手作業!Knaggs Guitars独特のネックフィーリングと真に美しい造形はこの手工によるものであった。当然ながらハンドカービングの匠として名高いジョー・ナッグス自身も隣で同様の仕事を施している。プレイヤーとギターを繋げるネックの成形には並々ならぬこだわりが見て取れる。



    ネック材は、全て柾目で木取られた贅沢なカーリーメイプルネック材。強固なネックは弦振動に干渉せず、弦振動の多くをボディに伝えることで驚くべき自然なロングサスティーンを生み出している。ダブルアクションのトラスロッドを真っ直ぐに仕込み、マホガニーのスプラインでキャップする。ヘッドにイヤーをつけ、外形を整えた後も更に3日間以上の自然乾燥を施してから指板を接着させ、工房ならではの手工によるアングルのカービングとジョイント部分の成形にうつる。


  • ノミを使ったネックジョイント処理、美しいカーブはこうして形作られている。黙々と作業に取り組みながらも質問には詳しく明確に答えてくれたディーン・ニッチ氏。

  • ヘッド裏アングル部分成形風景。

  • ネックとヘッド部分がつながっているため、作業前は写真のように木材が残った状態になっている。

  • ジョー・ナッグス氏によるチョップタンクネックの成形風景。

  • すべてが柾目のメイプルネック断面。

  • 並べられた加工前のネックとヘッドのイヤー材。

  • トラスロッドは、順反り/逆反りいずれにも対応できるダブル・アクション構造。

Finish Section<塗装>

アニリンダイによるハンドステイン塗装が施されるナッグスギターズ。手で生地に塗装を塗り込んでいくことで独特のカラーと際立つ杢を演出する。マホガニーはラッカーベースのフィラー(充填剤)により目止めされる。全体にベースコートが吹き付けられた後、320番のやすりで平面を出したのち、ラッカーを重ねて吹き付けていく。渇いたところをさらに600番の紙やすりで磨き、さらにトップラッカーコートを重ねていく。その後水拭きとバフで最終的な艶を生み出し、アッセンブリー・セクションに回される。


  • アニリンダイ・ハンドステイン着色風景。スプレー塗装とは違い、手で色を塗り込んでいくことがポイント。手のかかる着色方法であるが生地を活かした独特の風合いはこうして演出されていく。

  • さらに丁寧に平面をだし下地を作る。

  • (左)ギターはつるされ塗装を乾燥させながらトップコートを重ね塗りしていく。(右)塗装吹き付け風景。

Assembly Section<組み込み/セットアップ>

ジョーが全幅の信頼を寄せる、ファイナル・セットアップとリフレットにおいて30年にも及ぶキャリアを持つ最高の技術者ジョン・イングラム氏。PRSにてプライベートストックおよびArtistといったモデルのほとんどを組み上げてきたセットアップのスペシャリストである。アッセンブリーの組み込み、手作業によるナット・ハンドカットを含む全ての最終セットアップは彼の手に委ねられている。


  • 最終的なアッセンブリー/パーツの組み込みを行なうジョン・イングラム氏。

  • ナットの溝切りも、ジョンによる手作業。

  • 本人はいたって陽気な性格で現場の空気を和らげていた。