1954年中期にレス・ポール・スタンダードの兄弟機として発売されたのが、レス・ポール・ジュニアである。スタンダードがアーチトップ構造であったのに対し、ジュニアはフラット・トップで、1枚板のマホガニー材が使用されている。その当時使用していた材だが、現在入手困難品種に指定されているホンジュラス・マホガニー。材の特徴はだが、まず見た目は魚の鱗のように角度によって「キラッ」と光を放ち、そして何より軽量であることが挙げられる。
ボディには1マイクのみをマウントした男侠あふれる仕様。ブリッジはスタッドがボディへ直に打たれたスタイルで、なおかつテイルピースが一体型であることから、弦振動が直接ボディに伝達する。これにより本体の鳴りは非常に優れている。指板には、当時は標準仕様だったブラジリアン・ローズウッドを使用。ドット・ポジション・マークに、バインディングなしと装飾類をシンプルに仕上げることで作業コストを削減し、これにより価格もスタンダードに比べて低価格設定となっている。
50年代のレス・ポール・ファミリーのラインナップは、カスタム、ジュニア、スタンダード、スペシャルが存在する。この中でスタンダードは1952〜60年までの間に9,557本を生産したのに対し、ジュニアはそれのおよそ2倍の生産量だったという。このことからもエントリー・ユーザー向けの商材だったことが窺い知れる。ちなみに1959年当時のレス・ポール・ジュニアの価格は$132.50で、スタンダードが$265、カスタムは$395であった。
1958年中頃には、今回紹介するダブル・カッタウェイ仕様へと変更となった。58〜59年の中頃まではボディのエッジが立ったシェイプをしており、59年中頃から60年に行なわれたマイナー・チェンジで、そのエッジ部が丸くなった。1961年には、スタンダード同様にSGシェイプへと変更。そして、再び登場するのは25年後の1986年で、ドッグ・イヤー・タイプのカバーによるP-90や、チューン・オー・マティック・ブリッジの採用、ゴールド・ノブに、メタル・ツマミのチューナーなど、50年代のものとはまったく違うモデルとなってしまう……。
現在では、ギブソン・ヒストリック・コレクションが1993年よりスタートし、当時のモデルを研究して、見事な復刻モデルを完成させている。中でも、1999年以降のモデルでは、無垢のマホガニー材に一番先に塗られる目止め剤として、当時のような杢目が滲んだ感じになるようなフィラーが使用されるようになった。これにより、50年代当時と遜色ないリアルなフィニッシュを実現している。このフィニッシュを提唱したのが、かの有名なトム・マーフィーで、彼のアイデアが至るところに、ヒストリック・コレクションには詰め込まれている。また、ヒスコレでは写真のようなバンブルビー・キャパシターも採用しており、普段目に触れない内部パーツにおいても、オリジナルの雰囲気を損なわないように配慮している。 |